2023年11月21日火曜日

【刊行物のお知らせ】小西真理子著『歪な愛の倫理 ――〈第三者〉は暴力関係にどう応じるべきか』 (筑摩選書 268)

あるべきかたちに

回収されないもの

――暴力の渦中にある<当人>の語りから、

<第三者>の応答可能性を考える。

 

DV(ドメスティック・バイオレンス)に代表される、暴力関係から逃れられないひとには、実際、何が起きているのか。問題系を前提とした〈当事者〉ではなく、特定の個人に注目した〈当人〉の語りから議論を始めたとき、〈第三者〉は、どのようにして応答することができるのか。本書は、「なぜ暴力関係から逃れられないのか」という問いへの通説的な見解に対して、再考を迫る。あるべきかたちに回収されない異なるエートスを探求する、刺激的な論考。

 

【目次】

まえがき 親密な関係に生じる暴力を問う――〈当人〉と〈第三者〉のあいだの亀裂

 

第1章 なぜ暴力関係から逃れないのか【通説編】――専門家らによる見解

1 加害者から離れたがらない被害者たち

1-1 DV加害者から離れない被害者たち/1-2 親をかばう被虐待児たち

2 専門家らによる代表的な回答

2-1 加害者の暴力によって無力化しているから/2-2 加害者の「愛情」に固執しているから/2-3 加害者に支配/洗脳されているから/2-4 加害者に依存しているから

 

第2章 なぜ暴力関係から逃れないのか【異端編】――語られる歪な愛

1 分離以外の解決策の必要性――「離れたくない」

2 〈当人〉の言葉の真正性――「私は相手のことをよく知っている」

3 依存がもたらす救済――「依存によって生きのびられる」

4 欲望される暴力や支配――「私はマゾヒストである」

 

第3章 分離とは異なる解決策――DVと修復的正義

1 加害者との関係性切断を拒絶する被害者

1-1 ノードロップ政策/1-2 リンダ・ミルズによる問題提起

2 DVにおける修復的正義の実践「サークル・オブ・ピース」

3 DVに修復的正義を適用することへの批判

4 日本の現状と今後

 

第4章 暴力的な存在と社会的排除――トルーディ事件を考える

1 トルーディ事件

2 トルーディの真正性

2-1 トルーディはどうして問題視されたのか/2-2 トルーディ・シュトイアナーゲルの論文/2-3 トルーディの声

 

第5章 生きのびるためのアディクション――自己治療・自傷・自殺

1 自己治療仮説

2 日本における「生きのびるためのアディクション」

3 見えなくなっていく死(者)

3-1 死に至る自己治療/3-2 医療や支援からの拒絶/3-3 「生きのびる」ことに回収できない肯定性/3-4 依存先が形成できないとき

 

第6章 介入と治療からの自由

1 〈第三者〉にできること:ドラマ『ラスト・フレンズ』から考える/

1-1 身近な他者としてどう関わるか/1-2 公的支援の必要性と限界

2 自傷他害とパターナリズム

2-1 適応的選好形成/2-2 他害/2-3 自傷






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